はやぶさのカフェから2週間、JAXAへ「開催結果シート」、つまり報告書を提出しました。(阪東先生、報告書作成お疲れ様!)
この報告書には質疑応答の内容を記入する欄があったんで、スタッフの仁科先生が頑張って思い出して書き起こしました。(仁科先生の記憶力、すごいです!)
折角なので報告書に載せきれなかった分も含めて記録として留めることにします。
私たちは宇宙技術の専門家じゃないので間違ってたらごめんなさい。コアなはやぶさファンの方からのツッコミ歓迎!
吉川先生に対する質問とその回答(順番は適当です)
質問:小惑星についてS型とC型と出てきたが他にあるのか?
回答:他にもM型などいろいろな型があり、スペクトル(色)で分類されている。「はやぶさ」はS型のイトカワを目指したが、「はやぶさ2」では地球に接近する軌道をもつC型小惑星「1999JU3」を目指す。C型には有機物や水が存在する可能性がある。
質問:命の起源となる有機物について、たとえばDNAなどは紫外線で破壊されるのではないかと思う。具体的にどのような有機物を探したいのか?
回答:DNA等は確かに紫外線で破壊されてしまうが、アミノ酸は隕石中に見つかることがあり、宇宙でも分解せずに存在すると考えられる。
質問:はやぶさ2で計画している砲弾を小惑星に打ち込みクレーターをつくるミッションについて、具体的にはどうするのか?
回答:クレーターを作ることで、太陽光や宇宙線で変質していない小惑星内部の物質が採取できる。はやぶさ2から切り離した「衝突装置」に仕込んだ爆薬を上空で爆発させ、小惑星めがけて金属の砲丸(銅製、重さ2kg)を打ち出す。砲丸を打ち出す時の高度は上空数百メートル(2~300メートルくらい)。影響を避けるため、爆発時にははやぶさ2を小惑星の陰に退避させる。
質問:爆発に用いた火薬によってサンプル汚染は起こらないのか?
回答:砲丸を打ち出す高度が高いので問題ないと考えられる。また、汚染があっても見分けることが可能である。
質問:砲弾の衝突で小惑星の軌道が変わってしまったりしないのか?
回答:運動量保存の法則で考えればよい。小惑星と砲丸の質量が大きく異なるので影響を受けることはない。大丈夫。
質問:はやぶさ2でははやぶさで使用した蛍光X線分光計を積まない理由について。
回答:積みたいのは山々だが今回のミッションの内容では、この領域の波長の測定はあまり役に立たない。
質問:次回のミッションではやぶさ2の出発時期が限定されるのは何故か?
回答:地球と目標の小惑星1999JU3の軌道から計算した。はやぶさ2をこの小惑星に送り込むためのフライバイのタイミングは1回のみだが、その軌道へ乗せるための打ち上げのチャンスは3回ある。早めに打ち上げるとイオンエンジンの慣らし運転が出来るので有利である。
質問:行きは時期が限定されているが、帰りはどうなのか?
回答:行くときは小惑星に着くときに減速する必要もあって難しいが、帰りは地球の大気圏に突っ込めば良いのでいつでもOK。このため行くときより帰りの方が時間的にも早い。また、帰還後のはやぶさ2を大気圏突入させずにラグランジュポイントに乗せることが可能かなど、新しい技術の可能性についても検討中である。
質問:イオンエンジン以外の可能性はあるのか?
回答:長期間の使用を考えたらイオンエンジンが良い。
質問:H2Aに他の衛星と相乗りで積んでいくことはできないのか?
回答:実はH2Aロケットは2段式なので速度が足りない。地球の周りを回る人工衛星には向いているが、遠くの惑星に送り出すには不向きである。このため、詰める重さギリギリになってしまうと思う。相乗りはまずできないだろう。
質問:イトカワから岩石が少しずつ飛び出しているとのことだが、将来的にはどうなるのか?
回答:数億年のスケールで考えると無くなってしまうかもしれない。
本当はもっと多くの質問があったんですが、思い出せた分だけでご勘弁を。
ところで、このとき取材に来てくれた静岡新聞の記者さんの記事が1月30日(月)の朝刊に掲載されました。
橋爪さん、はやぶさ2プロジェクトの詳しい紹介、有り難うございます!