先月のサイエンスカフェin静岡は土屋麻人先生(静岡大学理学部物理学科准教授)による「超弦理論で解き明かす宇宙誕生の謎」でした。
超弦理論なんて難しいテーマだからお客さんは少ないだろうと考えた私、浅はかでした…
いつも以上に多くのお客さんが集まって、定員150名を超えてしまった!
調べてみたところ、これまでに150名を超えたのは今年1月の「はやぶさ2」と一昨年の「ブラックホール」の2回のみ。今回の「超弦理論」も究極の宇宙論ですから、宇宙の話の集客力が抜群であることが分かります。
今後は定員超過に注意するよう会場側から申し入れがあったのは
前回書いたとおりです。
さて、今回の超弦理論は素粒子の量子理論と重力の一般相対性理論を統一しようというものですから、まずはそれら二つを説明する必要があります。
実質1時間程度の持ち時間で現代物理学の二つの巨峰を制覇し、それを足がかりにもっと高みに登ろうってことですから、まあ全部を理解するののは無理…
そしてもちろん無理は承知でやってしまうのがサイエンスカフェin静岡(笑)
しかし、土屋先生の説明は端折るところは端折り、大事なところは数式も交えて詳しくと、メリハリの利いたお話でした。基礎から始めて最後の10分間はご自身が提案した行列式で時空間を表す理論(つまり最先端で大学院博士課程レベル)まで、キッチリ時間内に納めて頂きました。
難しいながら何となく分かった気にさせてくれる明快な講演で、アンケートでも「難しいくて分からなかった」という当然至極の感想に混じって、「分かりやすかった」というものがいくつかあったくらいです。
超弦理論の説明を1時間でまとめた力量はすごいと思ったのですが、後で聞いたら何度か練習してカフェに臨んだとのこと。さすが…
それから、最後に出てきた行列式で時空間を表す理論の論文は発表後10年ほどで引用数600回を超しているそうで、この分野ではモンスター級の論文だとのことです。この行列式を解いていくと、時間が1次元、空間が3次元に折りたたまれるってことだそうですが、私はこの辺で限界 orz
講演内容については後でダイジェスト版を公式ページにアップしますので、そちらをご覧下さい。
今回はいつもより若いお客さんが多かったようです。最後の質問コーナーでは、二人の小学生が大活躍しました。
最初の小学生は低学年のお子さんで、質問は
「どうして宇宙ではものが浮くんですか?」
それまで理路整然と話していた土屋先生でしたが、これには全く虚を突かれたようでシドロモドロ
アンケートにも「子供の質問への答え方が下手」なんて書かれてしまいましたが、お子さんの質問って、いったいどんなレベルで答えれば良いのか分からないので、ホントに難しいんですよ… でも、土屋先生のお人柄が垣間見えて会場が和みましたね、このときは
二人目の小学生は高学年の男の子で、前回もお母さんと来てくれた子です。質問は
「ブラックホールの中心にある特異点は、本当に点なんですか?」 …これまたビックリ(笑)
宇宙好きのお子さん、まさに栴檀は双葉より芳し! 後生畏るべし。
講演終了後、質問者が集まるのはいつもの光景ですが、今回は会場の利用時間が過ぎても質問者の列が途切れず。土屋先生、最後は廊下に出て対応していました。
「宇宙」への関心、やっぱりスゴイや!
12/6/5 以下の訂正をしました m(__)m
誤「重力の特殊相対性理論」
正「重力の一般相対性理論」
Posted by 元サカ at
18:44
│Comments(4)
サイエンスカフェは毎回楽しみにしていますが、坂本先生のブログのアップも思い出すことができるので楽しみしています。今期は興味深いテーマが多い中、土屋先生の超弦理論は何をおいても出席したいと思っていました。予習と思い、いくつのかヒモ理論の書籍を読んでいましたが、現在我々が存在できているのは、必然なのか偶然なのか結論があいまいな印象でした。偶然と考えている方々は、土屋先生が仰っていた虚数を使った計算をしたために4次元時空が必ずしも広がる結論が得られなかったからなのでしょうか?実数だけの計算で4次元時空が広がったという解が得られたということは必然の可能性もあるのかとわくわくしました。ぜひ「京」を使って未来の計算にもチャレンジしていただきたいです。期待しています。
傍観者A様
コメントを頂き、嬉しいです!
また、今回は予習までされたとのこと、有り難うございます。
このご意見は土屋先生に送っておきますね。
今後ともよろしくお願いします。
ご質問と励ましのお言葉ありがとうございます。おそらく本で読まれたのは、「弦の相互作用が弱いとき」にのみ有効な従来の超弦理論の研究方法を用いたときに得られる結論のことではないでしょうか。
確かに、従来の方法では時空の次元は理論的には4次元に決まりません。
(この範囲で4次元であることを示そうという試みはあります。)
一方、行列を用いた「弦の相互作用が強い」ときにも有効な新しい方法では、お話しましたように4次元に決まると強く期待されます。このようなことはまさに今研究の真っ最中のことでして、学術論文以外の書籍ではなかなか読めないのが現状です。
しかし、やはり専門ではない方にその面白さを何とか伝えたいと日々思ってもいますので、今回のサイエンスカフェは私にとって非常に貴重な機会でした。
土屋先生、丁寧にご回答いただきありがとうございます。坂本先生もわざわざ送っていただき感謝いたします。
先生の回答を見て、自分はきちんと理解できていなかったと感じましたが、書籍にまだ書かれていないことが聴講できたんだと改めて実感できました!
さすがに論文を読んでもちんぷんかんなのでやめますが、先生の研究成果が一般書籍になる頃には最新の段階で知っていたと優越感に浸れそうです。